フィリピンの本当の経済力とは(フィリピン経済帝国の真実)

「フィリピン」と聞くと、多くの日本人が思い浮かべるのはスラム街、交通渋滞、汚職、そして経済的な困窮である。確かに政府統計上、フィリピンのGDPや一人当たり所得は東南アジアの中でも中程度であり、ベトナムとほぼ同等、インドネシアよりやや下といった位置づけである。
しかし、それらはあくまで“表”の数字である。真に注目すべきは、GDPに反映されない“裏の経済”――すなわち、世界中に広がるフィリピン人ディアスポラ(海外移民、出稼ぎ労働者=OFW)によって形成された「比僑(ひきょう)ネットワーク」の経済力である。
見落とされている“もうひとつのフィリピン”
現在、約1,500万人以上のフィリピン人がフィリピン国外にいるとされる。フィリピン政府ですらもはや実際の数字を把握しきれていない。そこでWikiPediaで調べてみたが少し古いデータ(2019年)時点で約1500万人となっていて国ごとのフィリピン人の数が参照できる。※出典 Wikipedia Overseas-Filipinos
2025年の現時点では1500万人以上は確実と見てよさそうだ。しかし、恐らく実際にはその数を遥かに上回ると予想される。海外フィリピン人の子供(両親がフィリピン人に限る)などを含めると、おそらく2,000万人を超える「比僑」が存在すると推定される。フィリピン人と現地の配偶者の子供(フィリピン人ハーフ)なども含めると恐らく3000万人を超えると推測されるが、正確なデータはもはや存在しない為あくまで推測となる点はご容赦頂きたい。
彼らが生み出す経済力は尋常ではない。たとえば、アメリカで看護師として働く比僑女性の年収は、1,000万〜1,500万円に達するケースもある。オーストラリアやカナダでは、フィリピン人のIT技術者、エンジニア、経営者が多数活躍している。特に興味深いのは、こうした高所得者層が比僑ネットワークの中で、血縁や婚姻によって経済的恩恵を親族に還元しているという点だ。
国家を超える“家族単位の経済圏”
比僑の送金は単なる小遣いではない。彼らが毎月親族に送る金額は平均して5万〜30万円、多いケースでは50万円を超える。これにより、フィリピン国内では“実質的に日本人以上に豊かな生活”を送っている家庭が数多く存在する。実際、スラムに住みながら最新のiPhoneを持ち、エアコンと大型TVを設置し、車まで所有する比僑家族は少なくない。
なぜそんな暮らしが可能なのか? 答えは単純である。「自分では働かずとも、海外にいる親族が生活費以上の金額を定期的に仕送りしてくれる」からだ。
白人系アメリカ人以上に稼ぐフィリピン人:米国統計が示す衝撃の事実
「フィリピン人=貧しい」というイメージは、もはや時代遅れと言える。
米国政府の統計データによると、なんとアメリカ在住のフィリピン人の平均世帯収入は、白人系アメリカ人を上回っているという事実が判明しているのだ。
この事実は、フィリピン人コミュニティが持つ「隠れた経済力」と「国際ネットワークの強さ」を象徴しており、日本人の固定観念「フィリピン人=貧しい」を覆す内容と言える。
アメリカに住むフィリピン人の平均世帯収入
アメリカ合衆国国勢調査局(U.S. Census Bureau)のデータによると、2021年時点の人種別世帯収入中央値は以下の通りとなっている。
人種・民族グループ | 世帯収入中央値(USD) |
---|---|
フィリピン系アメリカ人 | 約 $101,000 |
白人系アメリカ人(非ヒスパニック) | 約 $77,000 |
アジア系全体平均 | 約 $94,000 |
ヒスパニック系 | 約 $57,000 |
黒人系 | 約 $48,000 |
なんと、フィリピン系アメリカ人の平均世帯収入は、白人系アメリカ人を大きく上回るどころか、アジア系の中でも最上位クラスに位置している。
なぜフィリピン人はアメリカでこれほど成功しているのか?
1. 医療・看護業界に強い人材供給力
- フィリピンは長年にわたり、英語力の高い医療人材を大量にアメリカに送り出してきた。
- 特に看護師においては、アメリカの病院ではフィリピン人ナースが中核的存在になっている。
- 年収は $80,000〜$120,000 に達することもある。
- 米国でライセンスを取得し、安定した職に就いている。
2. 教育熱心で家族単位で収入を支える構造
フィリピン人は非常に教育熱心で、アメリカ移住後も子どもの教育や専門職キャリア構築を重視する。
また、家族が支え合う文化が強く、複数の大人が同居して共に収入を得て家計を支える「拡大家族モデル」が一般的。この結果、世帯全体としての収入が自然と高くなりやすい。
3. 英語ネイティブに近い語学力と適応能力
アメリカ社会で成功するうえで、英語能力は大きな武器と言える。
フィリピンでは教育が英語で行われているため、フィリピン人は最初から高い英語力を持っており、移民の中でもアメリカ社会への適応が非常に早いという圧倒的な強みを持っている。
統計から見えるフィリピン人ネットワーク(比僑)の経済力の凄さ
この現実は、単なる統計以上の意味を持っていると言える。
かつて「発展途上国」の代名詞だったフィリピン出身者が、世界最強経済国家であるアメリカにおいて、白人系住民以上の経済力を築いているという事実。
これは「どこに生まれたか」ではなく、「どう生きるか」「どう繋がるか」が時代を切り開くということを示していると言えよう。
ちなみに筆者の親族(フィリピン人の妻の弟)もこの比僑構造を活用している。妻の弟は、比較的裕福なフィリピン人女性と結婚し、その親族がオーストラリアで成功していた。なんとその女性の姉は、とあるオーストラリア中堅企業のCEOの妻であり、彼女の紹介で夫妻はすぐに職とビザを獲得。今ではかなり裕福な生活を送り(オーストラリアで夫婦共働きなので恐らく世帯年収は1000万円以上)、立派な一戸建てとそこそこ綺麗な車を所有している。これは平均的な日本人よりも豊かな暮らしである。
統計に現れない“影の経済帝国”
フィリピン政府の公式統計において、送金はGDPの10%以上を占めているとされているが、実際にはこれを遥かに超えている。なぜなら、以下のような“非公式”の富の移動が統計に含まれていないからである。
- GCASHやPayMayaなどの電子送金(追跡不能な場合あり)
- 現金手渡し(帰国時に直接渡す、他人経由)
- 物的送金(Balikbayan box=大型ダンボールでの家電・食品・衣類の輸送)
- 教育費や医療費の肩代わり(海外に住む親族が直接支払う)
たとえば筆者の娘は、アメリカに住む妻の母から15万円相当のノートPCを贈られた。これに加え、服、食品、生活用品などが定期的に送られてくる。また学費や月15,000円の習い事(ヴァイオリン)もアメリカに住む妻の母が払ってくれている。これは実質的には「月数万円分の現物支給」と同じであるが、GDPには一切反映されない。
フィリピン人は経済的には豊か、しかしフィリピンという国は貧しい
フィリピンという国は、実質的には「経済的に豊かな家庭が大量に存在する国家」である。しかしその反面、政府・制度・インフラ・教育・医療などは極めて未整備である。つまり、“個人・家族”が豊かで、“国家”が貧しいという、極めてねじれた構造をしているのだ。
こうした矛盾を端的に表すのが、筆者が提唱する言葉「開発無き発展」である。国家主導のインフラ整備、教育改革、行政制度の高度化といった「開発」は一切進んでいない。それどころか、政治家たちは汚職にまみれ、国民の将来には何の関心もない。にもかかわらず、フィリピン人は外の世界で成功し、国に金を送り続けている。これはもはや、「発展」の定義そのものを問い直すべき事例である。
国の腐敗が民族を鍛えた
さらに皮肉なことに、フィリピンの経済的成功は“国の失敗”によって生まれたとも言える。政治があまりにも機能不全で、将来に希望が持てないがゆえに、優秀な人材たちは海外へ脱出した。そして彼らは、アメリカやオーストラリア、カナダ、ドバイといった地で必死に努力し、現地の制度や経済を吸収し、富を築いた。
その富が家族単位で再配分され、さらに次の世代がまた海外へ渡り、経済力を拡大していく――。このサイクルが完全に根付き、「比僑経済帝国」が形成されたのである。
比僑とは何か?
比僑とは、筆者が名付けた「フィリピン人ディアスポラ」を表す言葉である。華僑が中国外で築いたビジネス帝国と同様に、比僑は世界中で職業ネットワーク・縁故関係・家族連携を活用し、経済的な成功を収めている。
彼らは国に頼らない。制度も期待しない。自分たちの手で、自分たちの血縁だけで経済圏を築いている。その強さは、すでに多くの先進国の中流階級を凌駕している。
まとめ:フィリピンを再評価せよ
フィリピンを「発展途上国」と表現するのは、もはや時代遅れである。真実は、国家としての制度は未熟でも、民族としての経済力は世界有数のレベルにある。送金、教育支援、物的援助、就労支援、縁故採用――これらが一体となって、フィリピンという国を支えている。
表に見える数値だけではなく、“実際に人々がどう暮らしているか”を見なければ、本当の経済力は見えてこない。そして、比僑ネットワークの広がりは今後さらに加速するだろう。国が育てたわけではない。民が勝手に育ち、世界を動かしている。
フィリピンとは、まさに「開発無き発展」を体現する、現代の経済民族国家なのである。
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